2013年12月7日土曜日

特定秘密保護法成立


予想通り、「特定秘密保護法」が成立した。

与党自民党の中のリベラル派に一縷の期待を持っていたが、安倍政権の暴走に対する抑止力として働くには、その勢力はあまりに弱すぎたと言うことか。
と言うより、明らかに自民党が大きく変質したと言うべきだろう。
それは、国民全体がいわゆる右傾化していることと無縁ではあるまい。ここで言う右傾化とは、簡単に言えば、一人一人の人権よりも“国家”を優先させる指向ベクトルである。
その結果、国会において、もはや、従来の“保守”,“革新”では割り切れない、“国家主義的”政治勢力が与野党を問わず力を増している。しかも戦争の記憶が薄い年齢層ほどこの傾向が強いことに、筆者は大きな不安を覚えるのである。

この法案を支持する人たちは、北朝鮮や覇権傾向を強める中国の存在を意識してのことだろう。北朝鮮の暴発は怖い、尖閣諸島の領有権を巡って,中国との間に不測の事態も起きかねない、そう国民の多くが不安を抱いているのも確かである。
この空気を安倍政権は千載一遇の機会と捉え、強引に成立を図った。

安倍政権が進める国家主義的諸政策はこの法案に留まらない。道徳教育の教科化やNHK人事に見られるメディア支配の強化、普天間基地の移設問題、エネルギー基本計画策定にもこの政治姿勢が垣間見られる。
国家安全保障会議(日本版NSC)の新設、特定秘密保護法、さらには集団的自衛権の確立、と見てくれば、この政権は「戦争を出来る体制作り」を目指しているとしか思えない。これは現行憲法の平和主義を否定する国作りだ。
いわゆる「決められる政治」とは、国民の意向を忖度せず、国家権力を剥き出しにすることのように見える。エネルギー政策、労働政策一つ見ても、この政権が国民の利益よりも何を優先しているかは明白であろう。筆者には現今の中国と次第に相似形をなしていくように見えるのである。

このような安倍政権を誕生させたのは、国政選挙の結果である。
一票の格差問題ばかりに焦点が合わされるが、民意を反映しにくい現行の小選挙区制ではなく、以前の中選挙区制なら、今回の事態は招かなかったであろう。さらに、ドイツなどの比例代表制に重きを置いた選挙制度なら、このような法案が上程されることもなかったであろう。明らかに選挙制度の欠陥がもたらしたものとして、今回の事態を記憶されるべきだ。

しかし、次回以降の国政選挙次第では、この法律を廃止乃至は大幅な改正も可能である点に希望をつなぐことが出来る。
国民の多くがその時まで、この政権が推し進める危険な政策をよくよく理解し、想いを持続していられるかどうかにかかっているが。