2015年7月16日木曜日

「安保法制」採決強行ー民主主義の否定、法治国家への侮辱

強権的で、民意に侮蔑的に向き合い、現行憲法を侮る姿勢を続けてきた安倍政権なら十分予想されたことではあるが、昨夜(7月15日)衆議院特別委員会で「安保法制」法案が強行採決された。
これにより衆議院本会議を経て参議院に送られ、仮に参議院で否決されたとしても、「60日ルール」で成立する運びとなるだろう。

各種世論調査ではこの法案に反対する人が過半数を超え、憲法の専門家のほとんどが憲法違反であると判断している中での強行突破。
民主主義を否定し、憲法に基づく法治を足蹴りにした。

この度の法案は先の集団的自衛権行使容認の閣議決定にさかのぼる。この事については昨年6月のブログ(2014年6月17日)に書いたので繰り返さない。

アメリカ合衆国大統領就任式では、合衆国憲法遵守を誓約する儀式を行う。
日本の憲法でも第99条で、天皇をはじめ、国務大臣(首相も)、裁判官、国会議員、公務員は憲法を尊重し、擁護する義務を負う、とうたっている。
現行憲法を尊重遵守する気がないのであれば、国会議員を辞任するか、少なくとも国務大臣就任は辞退すべきだ。
安倍首相は現行憲法に否定的であることを隠そうともしない。

安倍首相の祖父岸信介も、改憲に取り組んではたせなかった。
その遺志を継ぐかのように安倍もまた改憲をもくろんでいる。
遺志を継ぐと言えば美談に映るが、祖父岸もまた民意を無視して、1960年日米安全保障条約の国会批准を強行した。歴史は繰り返すだ。
奇しくも、この度の安保法制は日米安保条約の中身を根本的に変える意味を持つ。

中国など日本周辺のアジアの国から見れば、これまでの日米安全保障条約は日本の軍事大国化を防ぐものと見えただろう。それは日本と戦ったアメリカの望むものでもあった。
しかしアメリカの相対的な弱体化の中で、「世界の警察官」としての役割を日本にも分担してもらいたい、というのが、アメリカの本音となってきた。
日本としても、中国の経済面だけでなく、軍事面でも大国化してきた中で、日本の安全保障を高めるためにも、より一層アメリカとの軍事同盟関係を強める必要があると外交当局をはじめ、安倍政権は判断しているのであろう。
筆者はこの判断をいわゆる戸締まり論として理解は出来るが、支持しない。

アメリカとの軍事同盟強化は一見抑止力の強化と映るかもしれない。しかし中国のような大国には抑止効果より、中国をより一層軍事大国化に走らせ、あげくは軍拡競争につながる。民主主義国家日本の財政はこれに耐えられない。
国家関係が複雑に入り組んでいる中では国家間の戦争の危惧は後退しているが、外交関係が緊張すれば、やがて軍事的な緊張につながる。

安倍首相は中国を仮想敵国と見なしているのは明らかだ。中国も安倍政権が進める一連の安保政策に警戒感を抱いているだろう。
戦略的互恵関係の言葉がうつろに響く。
敵意には敵意しか戻ってこない。これは互いに破滅への道だ。

安倍政権の一連の政治を見ていると、ヒットラー・ナチスドイツがどういうものであったのか、理解を容易にする。歴史から学ぶのではなく、逆に現代から歴史を学ぶことが出来るというわけだ。

民主党政権の未熟さと体たらくから、いわゆる決められる政治を求めた結果、安倍政権が生まれた。この政権は戦後70年に及ぶ保守政治を根幹から変える、まるでクーデタのような性格を帯びている。
安倍一派に自民党が乗っ取られ、政権が乗っ取られたように見えるのは筆者だけではあるまい。

                                                                        2015年7月16日