2013年10月8日火曜日

ニッケルハルパの音色


少し前に、わが家のミニホールでニッケルハルパコンサートを開く旨宣伝をした。

今週日曜日(10月6日)午後、アコーデオンの低音にのってニッケルハルパの素朴な、それでいて繊細な音色が、少し遠くから流れてくるように、行進曲でコンサートが始まった。さながら、北欧の田舎の祭りが目に浮かぶような音色である。

演奏者の鎌倉夫妻は民族衣装に身を包んで、ニッケルハルパの演奏と紹介、さらには舞踊と、トークを交えてスウェーデンラップランド地方の文化を紹介してくださった。

日本では馴染みが薄いニッケルハルパ。キー付きフィドル。音程はキーを押さえ、弓で4本の弦を弾く。奏者の鎌倉和子さんがおっしゃるには敷居の低い楽器とのこと。初心者がとりあえず正確な音程の音を出す、ということなら敷居が低いといえるが、演奏となると決して生やさしい楽器ではない。ヴァイオリン同様、ボーイングが重要になる。
4本弦というと、ヴァイオリンの仲間を浮かべる方も多かろうが、直接弓に触れない12本の共鳴弦が付いているので、音色もヴァイオリンとは少し異なる。繊細さに野太さがプラスされているように感じた。言うなれば、味わいのある楽器である。

この夏滞在先の札幌の地下道を歩いている時、偶然、初めてこの楽器の演奏に出会った。京都からやって来た若者たちのグループが、北海道公演に先立ちデモ演奏を行っていたのである。
すでにわが家でコンサートを開くことが決まっていたので、初めて聞くニッケルハルパの音色がとても気にかかった。というのは、打ち明けて言えば、このときの演奏では、主役とも言うべきニッケルハルパが他のビオラやギター、ドラムにかき消され、地味な印象しか持てなかった。ヴァイオリンが持つ華がないのである。

しかし、この度わが家での演奏は札幌での印象と全く異なった。若者たちは自分たちのオリジナルの曲を演奏していた。鎌倉さんは伝統的な曲を演奏してくれた。そのような演奏曲目の違いはあったろう。それ以上に印象を変えたのは、音響空間の違いであったと思う。札幌では雑踏の中、響きの悪い最悪の環境であった。

手前味噌になるが、わが家のミニホールは大きさの割には残響もあって響きがよいと演奏者から評価を得ている。とくに、ヴァイオリン、ギター、マンドリンのような繊細な音の楽器に向いていると思う。
この度の演奏では、共鳴弦の響きがよく聞こえ、ホールいっぱいに音が広がった。そのニッケルハルパの音色をそっと支えるように、ご主人がボタン付きアコーデオンで低音を奏で、まことに息のあった演奏を披露した。筆者の連れ合いも、目に涙がにじむ、心に響く演奏であったという。

鎌倉さんご夫妻は元来、民族舞踊の研究を続けてこられ、その中でニッケルハルパと出会い、何度もスウェーデンに渡航された。筆者の理解では、まるで三味線の習得に師匠に弟子入りするかのようにして、この楽器の演奏を習得されたようである。

鎌倉さんご夫妻から日曜日の午後、素晴らしい一時をご提供戴いたのであるが、集客が思うようにいかず、このようなすてきな時間を共有する人が少なかったことが残念である。それでも30名近い人々が満足して帰路についたものと確信している。

この場を借りて、鎌倉さんご夫妻にお礼申し上げたい。

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